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新川帆立さんの『倒産続きの彼女』を読んで
あらすじ
主人公が働く弁護士事務所に届いた1通の通報メール。
務めた会社が潰れてばかりの女がいる、どうにかしてほしいという内容だった。上司に言われ気が進まないなか調査することになり、その会社や彼女を調べて行くうちに思いもしない事件が発生し、どんどん巻き込まれて行く
新川帆立さんの『倒産続きの彼女』を読んだので、その感想を書いていきます
書籍情報
内容
主人公は28才の女弁護士、美馬玉子
玉子は先輩の剣持麗子と一緒にゴーラム商会の内部通報窓口に届いた1通の奇妙な通報メールを調べることになる
近藤まりあが今まで務めた会社が倒産している。彼女が不正行為をして潰しているのでは?という憶測を出ない内容だった
調べてみるとメールにある通り、近藤まりあが務めた会社3社が倒産又は民事再生法申立をしていた
そして現在、ゴーラム商会は倒産の危機に直面している
玉子と麗子は経営不振の経緯を知るため、近藤まりあや総務課長の只野から話を聞こうとゴーラム商会にてヒアリング開始する
しかしその最中、隣の部屋(通称『首切り部屋』)で首を切り倒れている女を発見
倒れていたのはヒアリング予定の只野だった
感想
人にオススメされ、なんの前情報もないまま読み始めました
『倒産続きの彼女』という題名なので、『彼女』が主人公だと思って読み始めたら、全然違っていて初めは中身が違っているのかと焦ってしまいました
主人公は弁護士です
そしてその弁護士が倒産する会社にばかり勤めている彼女を調べることで本編はスタートします
ブリッコな主人公
合コンから本書は始まりますが、男の前だとブリッコな主人公は、確かに他の女から嫌われるタイプだわと思って読んでいました
ですが仕事中はブリッコなどなく、男性相手であっても仕事を進めて行く姿にオンオフの切り替えがしっかりしている印象をうけました
ブリッコも相手に媚を売る為、意図してやっている描写があり、冷めた内心や手玉に取る描写は自身の付加価値を上げるための行為として表されていました
また他の人がやっているブリッコも冷静に受け止めていたのが面白かったです
物語が進むにつれてブリッコ描写も少なくなります
減る描写に玉子の意識が変わっていることを感じました
同じ事務所の先輩への感情
他人に対して劣等感や優越感を抱いている玉子には共感を感じました
特に劣等感を抱いていたのは同じ事務所の先輩、剣持麗子でした
この先輩、新川帆立さんの前作『元彼の遺言書』の主人公なのですが、残念ながら前作は読んでおらず大分読み進めた時に気が付きました
そんな苦手な先輩ですが、意外に熱い方でした
それって、何の得があるの。1円にもならないじゃない
倒産続きの彼女 p107
そんなセリフを言い捨てるので、とても損得勘定がハッキリしている人だと思って読み進めていましたが、言うだけで行動はとてもアクティブで気遣いが出来る人でした
玉子の苦手意識が変わってくるのもわかります
自分をしっかり持っている剣持麗子と接するうちに玉子の内面にも変化が起こります
自身の考え方や性格を徐々に変化させていく姿が増えるにつれて、ブリッコをしていた姿が減っていきます
その差がより玉子の変化を感じさせてくれました
意外に人が死ぬ
本書はミステリー小説です
人が死んで物語はどんどん展開していくのですが、大きな弁護士事務所に勤めている、殺人とは全然関係のない弁護士が向き合うにしては多すぎる人が死亡します
ただ被疑者を割り出すことや、被告の弁護をするわけではないので、死亡状況や遺体の描写などはほとんどありません
そのためか他殺なのか、自殺なのかよくわからないものも多かったです
ただ亡くなった事実だけ教えてくれている書き方でした
話自体も只野が死んでも犯人を捜すのではなく、近藤まりあが不正をしている可能性をずっと追っているのは今まで読んだミステリー小説とは違う感じがしました
調べている過程で少しづつ謎が明らかになっていきますが、謎解きという感じはなく、メインのストーリーのおまけのように進んでいくので解けた、わかったという感じはありませんでした
まとめ
不思議なミステリー小説です
謎を解きたい気持ちの強い人には残念ながらオススメできません
ですが、一風変わった感じの小説が読みたい人にはオススメです
普段ミステリー小説は読みませんが、サクサクと読み進めることが出来ました
難しい描写はなく、読みずらい言葉もなく、分かりやすく表でまとめられている部分もありました
普段本を読まない人にも良いと思います
文庫サイズなので邪魔にもなりませんしね
ただ、気になる要素を残してこの話は終わります
続きが出るのか、また主人公を変えて別の視点から話が進むのか疑問です
一皮剥けた玉子の成長がみたいので、ぜひ続編お願いします