廣嶋玲子さんの『妖怪の子、育てます』の感想

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今回は、【妖怪の子預かります】の第二シーズン『妖怪の子、育てます』の感想です

作品名:妖怪の子、育てます
著作:廣嶋玲子
出版社:株式会社東京創元社
発行日:2021年12月10日

目次

『妖怪の子、育てます』について

【あらすじ】
赤子となった千弥を「千吉」と名付け、自身の手で育てる事にした弥助。
妖怪の子預かり屋を続けながら、久蔵や妖怪たちの手をかり懸命に育てていた
そして月日は流れ千吉は6歳となった。
そんなある日、久蔵の双子の娘が黒い影に連れ去られてしまう。
二人を助けるべく、千吉と弥助はある村へ侵入する。

内容

物語の始まりは千弥が赤子になってすぐの時期になっています

赤子(千吉)と共に生きていく決意をした弥助は久蔵に太鼓長屋について相談へ行き、久蔵の所でお世話になることになりました

すぐに月日は流れ、千吉が6歳になった時点からお話は始まります

弥助や千吉の気持ちに触れるような内容や、日常生活などの話が続いた後、久蔵の双子の娘が連れ去られてしまいます

今まで出てこなかった妖怪の力を借りて、千吉と弥助は双子を取り戻すべく奇妙な村へと足を進めていきます

感想

第二シーズンという事で、どんな風に変わるのかワクワクしながら読み始めると、
挿絵が増えてる!

今までなかった挿絵が入っていてビックリしました

(嬉しい反面、電車とかでは少し読みづらくなったかもと、人目を気にする年頃でもないのに思ってしまったり、、、)

妖怪の子預かります第二シーズン「育てます」では、話の内容だけでなく本自体もバージョンアップしていました

主人公は千吉?

今までは弥助に焦点が当てられていましたが、大人になり忙しくなった弥助に代わり、千吉が物語を進めていくようです

本書の最初では赤ちゃんだった千吉もすぐに月日が流れ6歳になり、いろいろと思い悩むお年頃に成長していました

預かります1巻の弥助より年下なのに、落ち着いた雰囲気のある少年です

そんな大人びた雰囲気の千吉ですが、相も変わらず一番に考えるのは弥助のことで、相思相愛ぶりに変化はありません

変わらない妖怪たち

弥助は二十歳?近くなり、千吉も赤子から6歳になり成長しましたが、妖怪たちに身体的な変化はありませんでした

弥助と遊び回っていた津弓と梅吉は変わらぬ大きさで、今度は千吉と遊んでいます

人間とは違い、願えば大きくなるというのが妖怪の生態の様で、
「早く大きくなるな」と月夜公から望まれている津弓が大きくのはまだまだ先のようです

そんな変わらない妖怪たちの中、弥助たちと同じように成長していたのは半妖のみおでした

半妖だから成長しているのか、弥助と共に生きたいから成長しているのか
15歳に成長したみおは、6歳の千吉を牽制しながらも弥吉にアプローチを続けていました

新しい妖怪

今までは出てこなかった新しい妖怪が出てきます

西の奉行所の妖怪で名前は朔ノ宮、
東の奉行所にいる月夜公とは因縁の中のようです

弥助と千吉は朔ノ宮に力を借りて、連れ去られた双子を助けに行きます

今回の話だけではなく、今後も定期的に出てくるようです

次回

新しいシーズンが始まった今作

弥助に代わり千吉を中心に物語が進んでいくようです

次回の話について描写などはありませんでしたが、
弥助を守れるように強くなると決めた千吉が成長していく話のような気がします

まだ千吉に千弥のことを伝えていない二人の関係もどのように変化していくのか楽しみです

ネタバレ含む感想

ここからはネタバレを含む感想になります

ご注意ください

本書は本編と短編で構成されています
本編「妖怪の子、育てます」
短編「鼓丸の独り言」

プロローグ

赤子となった千弥を育立てることにした弥助
赤子のことを詮索されないように太鼓長屋から引っ越すため久蔵へ相談に行くと一緒に住むことを提案される

14歳の弥助が赤子を抱き、千弥が赤子になった経緯を久蔵へ話します

あれほど娘に男は近づけないと息巻いていた久蔵も弥助の決意を見聞きして一肌脱ぐことにしたようです
千弥に頼まれたのもあるかもしれませんが、よい友ですね

月日は流れ千吉は6歳となった
自身を見るたびにどこか悲しみを滲ませる弥助のことで悩み、家出を決行しようとするが久蔵の双子の娘、天音と銀音の登場によって諦めることになった
三人は近くの河原で遊んでいると水の中に黒い物をみつけた

千吉の弥助への気持ち、そして弥助の千吉への気持ちが書かれている回でした

それぞれが相手のことを大切に思っていることを実感します

でも、千弥のときもですが、言わなきゃ解らないよね

三人が見つけのは黒い手だった
玉雪に聞き黒い手の持ち主が黒守という妖怪だと特定したが、何とも厄介そうな人物で慎重に合うことを決め無事に手を返した

老若男女問わず、人の良い所を探して好ましいと思うような人が手の持ち主だったようで、子どもたちや嫁を心配してみんな久蔵の屋敷へと避難します

もちろん千吉もしぶしぶ避難しました
そのため黒守と会ったのは兎姿の玉雪と、弥助のみ

避難しても用心のためと出刃包丁を出しておくように言った久蔵はきっと本気です

津弓と梅吉が潮干狩りへ行こうと弥助と千吉を誘いにきた
だが、弥助は座敷童のとよと約束があり行けず、
千吉が弥助の分までアサリを取りに行くことになった
津弓の術で潮干狩り場までいくが、帰りは津弓の術が上手く効かず大変なことに!

人間と妖怪の人生の長さを感じ感傷に浸っていたのですが、最後の津弓の術の失敗に全部持って行かれた回でした

とても笑わせていただきました

みおが大きな化け雀を連れてやってきた
太りすぎて飛べなくなったので、弥助の所で健康的な食事を与えて痩せさせてほしいという
引き受けた弥助だったが、一緒に暮らしている千吉は長期間弥助を独り占め出来ないことに苛立っていた
そこで千吉はある計画を実行した

弥助は昔から小さい子にはとことん優しいですね

今回はその優しさが千吉を余計に苛立たせてしまいました

化け雀を痩せさせるためとはいえ、結構ハードな計画を実行する千吉
さすが千弥の生まれ変わりと言わざるを得ません

化け雀にした事がバレて弥助に叱られ、しょげてしまった千吉
やっぱり家出しようと決意するもまた双子に見つかり失敗に終わってしまう
三人で小さな橋の下で休憩しようと降りた時に黒い影が現れ、双子をさらってしまった
月夜公を呼んでくるが、月夜公より西の奉行所の方が適任であると朔ノ宮が現れた
朔ノ宮は弥助と千吉が役立ちそうだと連れて行った

初登場の西の奉行、朔ノ宮

朔ノ宮は月夜公とはとても仲が悪そう

娘が二人ともさらわれてしまった久蔵と初音は自分たちの無力さに打ちのめされます

朔ノ宮と一緒に西の奉行所へ来た弥助と千吉は事のあらましを聞く
二人にしか穏便に事態を収拾する術がないとわかり、事の発端となった村へと向う

双子を助けるため村へ向かうことになるのですが、危ない場所に千吉を連れて行きたくない弥助は抗議します

その抗議に対して反発したのは勿論千吉

最終的に折れたのは弥助でした

朔ノ宮によって連れて行かれた場所は村より山一つ手前
それ以上進めないという朔ノ宮と別れ二人は村を目指して異様な景色の中を進んでいく
途中、天音を見つけて助かるが、弥助のみ残り追手と対峙することになる

やっと一人助け出すも、バラバラになってしまった弥助と千吉

千弥だったら絶対に弥助を置いていくなんて選択肢はなかったはず
そう思うと二人の関係性の変化を感じます

上手く逃げた千吉と天音は夕方まで待つも弥助が現れることはなかった
千吉たちは先に銀音を助けることにした
一方、捕まってしまった弥助は逃げ出すための策を考えていた

敵に捕まったせいで自分の所に来れないと言い聞かせながら行動する千吉
そして子どもたちの情報を手に入れようと捕まりながらも対話をする弥助

弥助は子どもたちが逃げたことを確認できたので安心した様でした

今度は自分が逃げ出すための策を実行するため行動に移しました

九~十

銀音の居場所までたどり着き、見つけることが出来た千吉と天音
だが、銀音には何かが取り付いていた

銀音を見つけることができた二人ですが、銀音は何かに操られているようです

そして十では、村人視点で語られる回想になります
なぜ村が奇妙な状態へとなってしまったのか分かる内容でした

十一

銀音からの攻撃によりピンチな状況へと追い込まれた千吉を助けたのは弥助だった
全員合流するが状況が好転することなくジリジリと追い込まれていく 
弥助が転けた拍子にとよから預かったものが懐から飛び出し膨張し始めた 
状況は良くなったが、膨張が止まることはなく押しつぶされそうになった所を月夜公に助けられる

お話の一番の見せ場でした

座敷童のとよが出てきた理由がわかり、月夜公と千吉の関係性を再確認できました

弥助はずっと身体張ってるので、ちょっと心配になります

そして結局、良い所は全て月夜公が持っていった気がします

十二

月夜公によって無事に帰ってきた4人は手当てを受けた
双子は親元へ帰り、千吉と弥助は事情を聞かれることになった
千吉と分かれたあと弥助は捕まり、脱出するときに黒守に助けられたと語る
合流してから月弥公に助けられるまでを話した後、二人は帰宅した

全員無事に帰宅することが出来ました

厄介な人物である黒守と弥助の絡みや、それを聞き帰宅してからの千吉の行動は面白かったです

そして事情を話している間に垣間見える千吉が月夜公へ寄せる信頼を再度感じさせる所もあり、今後どのように関係が変わっていくのか楽しみでもあります

十三~エピローグ

千吉は玉雪に頼み朔ノ宮のいる西の奉行所へ向かう
朔ノ宮に会い、お礼と今回の真相と尋ねた
そして話を聞き終えた後、1つの頼み事をした
話を聞いた双子も朔ノ宮へ千吉と同じ頼みをする

礼儀正しい千吉は、きちんと座敷童のとよが預けたものは何だったのか、その後どうなったのか確認しに行ってくれました

ですが、それはついでだったようで、朔ノ宮に自身が強くなるためにお願い事をします

次の巻からはそのお願いの内容に移っていくのでしょうか
千吉や双子たちの成長が楽しみです

短編「鼓丸の独り言」

朔ノ宮の従者である鼓丸
鼓丸の一番の役目は朔ノ宮のおやつを用意すること
おやつを食べたながら、今後のことを話す二人

短編を読んで最初に思った感想が、毎日おやつを用意してもらえるなんて羨ましいだった・・・

千吉の頼みごとによって起こった双子や津弓の変化について語る回でした

本編では月夜公にいい所を思っていかれた朔ノ宮でしたが、短編では溜飲が下がる出来事がありご満悦のようです

麻(アサ)
シンプルライフに興味がある三児の母
片付けのこと、子どものこと、お金のこと等を備忘録として綴っていきます
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